「ビタミンDは、日光を浴びていれば足りる」
そう思っている方は、とても多いと思います。実際、ビタミンDは食事から摂るだけでなく、日光を浴びることで皮膚でもつくられる、めずらしい栄養素です。
けれど日本では、ビタミンD不足が思っている以上に広がっています。しかもその理由は、「日光を浴びていないから」という一言では説明がつきません。
ただ、この「日光を浴びていれば足りる」という前提は、日本で暮らす私たちの生活には、思ったほど当てはまりません。とくに冬は、住んでいる地域によって、必要な日光浴の時間が10倍近く変わってしまいます。
佐藤美咲


そしてもうひとつ、あまり知られていない事実があります。
日本人のビタミンD「欠乏」は、この10年で有意に減っている——これは2025年8月に発表された、日本の地域住民を10年間追いかけた調査の結果です。
「不足している」と煽られがちなビタミンDですが、実際のデータは「少しずつ改善している」と言っています。
では、なぜそれでも「足りていない」と言われ続けるのか。
答えは、「欠乏していないこと」と「足りていること」は、まったく別の話だからです。
この記事では、次の3つの数字を軸に、日本人のビタミンD不足の現在地を整理します。
- 76.4% — 血中濃度が充足ラインに届いていない人の割合
- 76分 — 12月の札幌で必要な日光浴の時間
- 9.0μg vs 6.6μg — 国が示す目安量と、実際の平均摂取量の差
読み終わるころには、「自分は日光・食事・サプリのどれを、どれくらい足せばいいのか」が、感覚ではなく数字で判断できるようになっているはずです。
「ビタミンD不足」と「欠乏」は、別のもの


ビタミンDが足りているかどうかは、血液中の「25(OH)D(25-ヒドロキシビタミンD)」という指標で判断します。この数値には、はっきりとした区分があります。
| 区分 | 血中25(OH)D濃度 | 意味 |
|---|---|---|
| 欠乏 | 20 ng/mL 未満 | 明らかに足りていない状態 |
| 不足 | 20〜30 ng/mL 未満 | 欠乏ではないが、充足にも届いていない |
| 充足 | 30 ng/mL 以上 | 足りている状態 |






10年で何が変わったのか
東京大学医学部附属病院22世紀医療センターの研究グループが、日本の地域住民を対象に10年の間隔をあけて2回、血中ビタミンD濃度を測定しました。結果は2025年8月27日、骨粗鬆症の専門誌『Archives of Osteoporosis』に発表されています。
- ベースライン調査(2005〜2007年):1,683名(男性595名・女性1,088名)
- 第4回調査(2015〜2016年):1,906名(男性637名・女性1,269名)


| 区分 | 2005〜2007年 | 2015〜2016年 |
|---|---|---|
| 欠乏(20ng/mL未満) | 29.5% | 21.6%(有意に減少) |
| 不足(20〜30ng/mL) | 52.9% | 54.8% |
| 合計(30ng/mL未満) | 82.4% | 76.4% |
たしかに、欠乏している人の割合は 29.5% から 21.6% へと、統計的に意味のある差をもって減りました。研究グループも「この好ましい傾向は、今後の骨粗鬆症および骨折発症率の低下に寄与する可能性がある」と結論づけています。






充足しているのは、約4人に1人
欠乏と不足を合わせると、2015〜2016年時点で76.4%。つまり、充足ラインである30ng/mLに届いている人は、およそ4人に1人という計算になります。
これが「日本人の多くが足りていない」の実態です。
「ほとんどの日本人が欠乏状態にある」といった極端な数字を目にすることがありますが、少なくとも上記の調査データとは一致しません。煽られる必要はありませんが、安心もできない——それが今のポジションです。
数字は、大きく見せても小さく見せても意味がありません。「改善しつつあるが、まだ届いていない」。これが一番正確な言い方です。
なお、「特定の栄養素だけが足りない」という状態は、ビタミンDに限った話ではありません。栄養の不足がどういう構造で起きるのかは、新型栄養失調とミネラル不足でも整理しています。
ビタミンD不足が関わる、3つの領域


ビタミンDは「骨の栄養素」というイメージが強いと思いますが、研究の対象はそれだけにとどまりません。ここでは、比較的エビデンスが蓄積されている3つの領域を見ていきます。


① 骨と筋肉
もっとも古くから知られ、もっとも確立されているのがこの領域です。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の再石灰化を促します。
2025年7月末、10年ぶりに改訂された『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』では、骨粗鬆症予防の観点から、血中25(OH)D濃度を20ng/mL以上に保つことが重要とされています。



同ガイドラインでは、運動療法によって筋力・バランス能力・歩行速度などが改善し、転倒予防効果が期待できることも示されています。骨の話は、栄養だけで完結しません。
② 免疫
ビタミンDは、カテリシジンやβ-ディフェンシンといった抗菌ペプチドの産生を促すことで自然免疫にはたらきかけ、炎症性の経路を調整する方向で獲得免疫にも関与すると考えられています。
この領域では、大規模な検証が進んでいます。急性呼吸器感染症の予防に関する研究では、37件のランダム化比較試験を統合したメタ解析でオッズ比 0.92(95%信頼区間 0.86〜0.99) という結果が報告されました。その後、参加者15,804名の大規模試験を含む6件が追加され、2024年に『The Lancet Diabetes & Endocrinology』で層別解析の結果が発表されています。






ここは正直に書いておきます。ビタミンDは、感染症を防ぐ薬ではありません。ただし、もともと欠乏している人ほど恩恵が大きい傾向があることも、同時に報告されています。
③ メンタル
ここ数年でもっとも研究が増えているのが、気分・メンタルとの関連です。
31件のランダム化比較試験を統合したメタ解析では、ビタミンDの補給がうつ症状を用量依存的に軽減したと報告されています。1日あたりの用量を増やすほど軽減の度合いは高まり、その効果の大部分は1日約5,000 IUで得られていました。
ただし、ここには重要な条件がついています。



また、若年成人を対象とした観察研究では、ビタミンD欠乏が不眠・ストレス・不安・抑うつ症状の高さと有意に関連していたという報告があります。推定されているメカニズムのひとつが、セロトニンの合成への直接的な関与です。
「冬になるとなんとなく気分が沈む」という感覚に、日照時間の短さとビタミンDが関係している可能性は、こうした研究から示唆されています。






疲労感やだるさが続く場合、ビタミンD以外の要因が重なっていることも少なくありません。鉄・ビタミンB群・マグネシウムとの関係は慢性疲労の原因は栄養素不足?鉄・B群・Mgの科学的根拠で詳しく扱っています。
また、「健診では異常なしと言われたのに、実は足りていなかった」という構造は、鉄でも同じことが起きます。フェリチンで見る隠れ貧血の話はその疲れ・めまい、”隠れ貧血”かもをあわせてご覧ください。
3つの供給ルートと、その”限界値”


ビタミンD不足を埋めるルートは、大きく3つしかありません。日光・食事・サプリメントです。
大切なのは、それぞれに「どこまで期待できて、どこから期待できないか」という限界があること。ここを数字で押さえると、自分に足りないピースが見えてきます。
ルート① 日光 —— 冬・北・日焼け対策の3つが重なると、ほぼ機能しない
皮膚に紫外線(UV-B)が当たると、体内でビタミンDがつくられます。よく言われる目安は、夏なら5〜10分、冬なら30〜40分。
ただ、この「冬なら30〜40分」という数字も、実は全国共通ではありません。
国立環境研究所と東京家政大学の研究グループは、ビタミンDを10μg生成するのに必要な日光浴の時間を、地域別・季節別に推定しています。成人が1日に必要とする15μgのうち、5μgを食事から、残り10μgを日光からまかなうという想定です。


12月の正午(快晴時)に必要な時間
| 地域 | 必要な日光浴時間 | つくば比 |
|---|---|---|
| 那覇 | 8分 | 約0.36倍 |
| つくば | 22分 | 基準 |
| 札幌 | 76分 | 約3.5倍 |






ここに、現代の生活習慣が重なります。
- 冬:紫外線量そのものが少ない
- 高緯度(北日本):太陽の角度が低く、UV-Bが大気で減衰する
- 日中は屋内:通勤・仕事・家事の多くが室内で完結する
- 日焼け対策:日焼け止め・日傘・アームカバーはUV-Bも遮る



なお、『日本人の食事摂取基準(2025年版)』でも「日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、日常生活において可能な範囲内での適度な日光浴を心掛けるとともに、ビタミンDの摂取については日照時間を考慮に入れることが重要」と明記されています。
つまり国の基準そのものが、「日光だけに頼るな、地域と季節を見ろ」と言っているわけです。
ルート② 食事 —— 目安量にも、推奨量にも届いていない
では食事はどうでしょうか。ここで2つの数字を並べます。


① 国が示す目安量
『日本人の食事摂取基準』の2025年版では、18歳以上のビタミンD目安量が 8.5μg/日 から 9.0μg/日 に引き上げられました。
② 実際の平均摂取量
国民健康・栄養調査によると、日本人の平均摂取量は 男性7.4μg/女性6.4μg(男女平均でおよそ6.6〜6.9μg)。
つまり、目安量に対して1日あたり2〜3μgほど足りていないのが平均的な姿です。
さらに、骨の観点から見るともう一段ハードルが上がります。『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』が推奨するのは 15〜20μg/日(600〜800 IU/日)。









では、何を食べればいいのか
ビタミンDが多く含まれる食品は、実はかなり限られています。
| 食品グループ | 代表例 | ポイント |
|---|---|---|
| 魚 | サケ、サンマ、イワシ、サバ | 供給源としては圧倒的に主力 |
| きのこ | 干し椎茸、きくらげ | 日光に当てるとビタミンD2が増える |
| 卵 | 卵黄 | 量は多くないが、毎日足しやすい |





もうひとつ大切なのが、ビタミンDは脂溶性ビタミンだということ。油と一緒に摂ることで吸収されやすくなります。焼き魚にオリーブオイルを回しかける、きのこをオイルでソテーする、といった調理の工夫が効いてきます。
サケのホイル焼きにオリーブオイルをひと回し、きのこはマリネに。難しいことをしなくても、いつもの料理で十分です。
なお、脂溶性ビタミンの吸収は腸の状態にも左右されます。「食べているのに届いていない」という感覚がある方は、腸活の本当の意味 ── 水溶性と不溶性の正しいバランスもあわせてどうぞ。
ルート③ サプリメント —— 「量」より「頻度」で結果が変わる
日光も食事も限界がある。となれば、サプリメントという選択肢が出てきます。
ここで、研究結果からはっきり言えることが1つあります。



急性呼吸器感染症の予防に関するメタ解析では、毎日または週1回の投与では効果が明確だった一方、間欠的な大量投与(ボーラス投与)では効果が確認されませんでした。
さらに小児を対象とした2025年のメタ解析(BMC Pediatrics)では、予防効果が確認されたのは 1日1,000 IU以下の少量毎日投与 に限られたと報告されています。






もうひとつの目安として、うつ症状に関するメタ解析では1日約5,000 IU で効果の大部分が得られていたという報告があります。ただしこれは、うつ病と診断された人を対象にした研究における数字です。健康な人がこの量を目指す根拠にはなりません。
マルチビタミンという選択肢
単体のビタミンDサプリではなく、複合型で日常的に補う方法もあります。
たとえば、当研究室でも扱っている dōTERRA の Microplex VMz には、ビタミンD 20mcg(=800 IU) が配合されています。抗酸化に関わるビタミンA・C・E+セレン、エネルギー代謝に関わるB群、そして骨に関わるカルシウム・マグネシウム・亜鉛といったキレート化ミネラルを含む設計です。ペパーミント・ジンジャー・キャラウェイのブレンドが配合され、胃への負担に配慮されている点も特徴です。
800 IU は、骨粗鬆症ガイドラインが示す 600〜800 IU の上限にちょうど重なる量です。単体の高用量サプリより、こうした複合型のほうが日常的に続けやすいという方もいます。
ジンジャーやペパーミントそのものの働きについては、冷房冷えと精油 ── ジンジャーのジンギベレン作用、消化不良と精油 ── ペパーミントのメントール作用でも取り上げています。
この記事の数字は、どこから来ているのか
ビタミンD不足のような栄養の情報は、数字ひとつで印象が大きく変わります。だからこそ、この記事で使った数字の出どころを明示しておきます。
| 数字 | 出どころ |
|---|---|
| 欠乏21.6% / 不足54.8%(合計76.4%) | 東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター/『Archives of Osteoporosis』2025年8月27日 |
| 目安量 9.0μg/日 | 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』 |
| 平均摂取量 6.6〜6.9μg/日 | 厚生労働省『国民健康・栄養調査』 |
| 推奨 15〜20μg(600〜800 IU) | 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』 |
| オッズ比 0.92(呼吸器感染症) | 『The Lancet Diabetes & Endocrinology』2024年 |
| 那覇8分/つくば22分/札幌76分 | 国立環境研究所・東京家政大学 |
| うつ症状の用量依存的軽減 | 31件のRCTを統合したメタ解析 |


使わなかった数字について
ビタミンDの記事では、「日本人の◯割が不足している」という強い数字がよく使われます。ただ、その多くはサプリメント関連企業が実施した調査や、対象者の限られた小規模なアンケートを出典としています。



そして冒頭でお伝えしたとおり、「欠乏は10年で減っている」という、記事の主張にとって都合のよくないデータも載せました。






今日からできる5つのステップ
ここまでの内容を、ビタミンD不足を埋めるための行動に落とし込みます。難しいことはひとつもありません。


STEP1|自分の「日光ルート」が機能しているか確認する
次の4つのうち、いくつ当てはまるでしょうか。
- 住んでいるのは東北・北海道などの高緯度地域
- 日中はほとんど屋内で過ごしている
- 日焼け止め・日傘・アームカバーを日常的に使っている
- 季節は秋〜冬
3つ以上当てはまる方は、日光ルートはほぼ機能していないと考えたほうが現実的です。その分を食事とサプリで補う前提に切り替えます。
STEP2|1週間に魚を食べた回数を数える
ビタミンDの主力供給源は、はっきり言って魚です。まずは記録ではなく、思い出すだけで構いません。
先週、サケ・サンマ・イワシ・サバのいずれかを食べたのは何回でしたか。






STEP3|きのこを「日に当ててから」使う
干し椎茸やきくらげにビタミンDが多いのは、乾燥の過程で日光に当たるからです。生のきのこでも、調理前に30分ほど天日に広げるだけで、ビタミンD2は増えます。
ザルに広げてベランダに置く。それだけです。
STEP4|油と一緒に摂る
ビタミンDは脂溶性です。油と一緒に摂ることで吸収されやすくなります。
- 焼き魚にオリーブオイルをひと回し
- きのこはソテーやマリネに
- 卵はゆで卵より、油を使った調理で
「何を食べるか」と同じくらい、「どう食べるか」が結果を左右する栄養素です。
STEP5|気になるときは、血中濃度を測る
ここがいちばん大切です。
ビタミンDは脂溶性で体に蓄積するため、自己判断での大量摂取は避けるべき栄養素です。「足りていないかもしれない」と感じたら、まず医療機関で血中25(OH)D濃度の測定について相談してください。






まとめ|「欠乏していない」と「足りている」は違う


ビタミンD不足について、この記事でお伝えしたことを3つの数字で振り返ります。
76.4% — 血中濃度が充足ライン(30ng/mL)に届いていない人の割合。欠乏している人は10年で29.5%→21.6%と有意に減りましたが、「不足」の層はほとんど動いていません。
76分 — 12月の札幌で、必要量をつくるのにかかる日光浴の時間。那覇なら8分です。冬・高緯度・屋内中心・日焼け対策が重なると、日光ルートは機能しません。
9.0μg vs 6.6μg — 『食事摂取基準2025年版』の目安量と、実際の平均摂取量。骨のガイドラインが示す15〜20μgとは、さらに開きがあります。
ビタミンDは、飲めば不調が消えるような魔法の栄養素ではありません。研究が示しているのは、もっと地味で、もっと確かなことです。足りていない状態を、足りている状態に戻す。それだけです。
そして、健診で「異常なし」と言われることと、足りていることは、同じではありません。
まずは今週、魚を1回増やすところから。それで十分です。
「数字」ではなく「実際にどう変わったか」を知りたい方へ
この記事では、研究データからビタミンDを整理しました。
一方で、「冬になると気分が沈む」という感覚から出発して、実際にビタミンDに目を向けた方たちが、そこで何に気づいたのか——そちらは別の記事にまとめています。
数字の裏側にある、生活の手ざわりのような話です。
▶ 冬になると気分が沈む…ビタミンDに着目した人たちの気づき(note)
7大栄養素、まとめて整理しませんか


ビタミンDは、7大栄養素のうちの「ビタミン」の一部にすぎません。
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参考文献・出典
- Yoshimura N, et al. 『Archives of Osteoporosis』2025年8月27日(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
- 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
- 厚生労働省『国民健康・栄養調査』
- 日本骨粗鬆症学会ほか『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』
- Jolliffe DA, et al. 『The Lancet Diabetes & Endocrinology』2024年(急性呼吸器感染症予防に関する層別メタ解析)
- 『BMC Pediatrics』2025年(小児における急性呼吸器感染症とビタミンDの系統的レビュー・メタ解析)
- 国立環境研究所・東京家政大学「体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定」









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