佐藤美咲


夏の頭皮の悩みは、検索するとすぐに「この精油がいい」「このシャンプーがいい」という答えが出てきます。でも、そもそも頭皮で何が起きているのかを飛ばしたまま道具を選ぶと、思ったような結果になりません。
この記事では、次の順で整理します。
- 頭皮のにおい・ベタつきは、何が起きているのか
- 精油を使う前に、やってはいけないこと
- 頭皮アロマの研究を「正直に」見る(何が分かっていて、何が分かっていないのか)
- 同じ「ローズマリー」でも中身が違う理由
- 実際の手順(洗う前・洗ったあと・乾かすとき)
読み終えたころには、自分の頭皮に必要なのがどちらのケアなのかが判断できる状態になっているはずです。
頭皮のにおい・ベタつきは何が起きているのか


まず、においとベタつきを分けます。
においの正体は「汗」ではない
意外に思われるのですが、汗そのものには、ほとんどにおいがありません。
においが生まれるのは、汗が単独で存在するときではなく、皮脂と、頭皮にもともといる常在菌が混ざったときです。常在菌が皮脂を分解する過程で、においのもとになる物質ができます。
つまり、においの成立には3つの要素がそろう必要があります。








ベタつきの正体は皮脂
一方、ベタつきは主に皮脂です。頭皮の皮脂腺から分泌される皮脂に、汗が加わることで、あの独特の重い感触になります。
ここで多くの方がつまずくのが、「皮脂=悪」だと考えてしまうことです。
皮脂は本来、頭皮を保護するために出ているものです。取りすぎれば、頭皮は「足りない」と判断して、さらに分泌を増やそうとします。洗いすぎがかえってベタつきを招くというのは、この仕組みによるものです。
なお、男性ホルモンには皮脂腺を大きくする働きがあり、分泌量が増える要因のひとつになります。
なぜ夏に強く出るのか
季節が関係するのは、湿度です。
春から夏にかけては湿度が高く、皮脂も汗も蒸発しにくくなります。頭皮の表面にとどまる時間が長くなれば、それだけ菌が働く時間も長くなる。冬と同じケアをしていて夏だけ気になるのは、頭皮が変わったからではなく、環境が変わったからです。
| におい | ベタつき | |
|---|---|---|
| 主な原因 | 皮脂 × 常在菌 | 皮脂の分泌量 |
| 汗の役割 | 皮脂と混ざる媒介(汗自体は無臭) | 感触を重くする |
| 悪化させる要因 | 蒸れ・乾かし残し | 洗いすぎによる乾燥/ホルモン |
| 打ち手の方向 | 清潔に保つ・乾かしきる | 洗いすぎない・落としすぎない |






先に伝えたい「やってはいけないこと」


精油の選び方より先に、こちらを置きます。頭皮は皮膚であり、しかも目と耳がすぐ近くにある部位だからです。
精油の原液を頭皮に塗らない
もっとも多い誤りです。
精油は植物の成分を高濃度に濃縮したものです。原液を直接、頭皮につけてはいけません。 必ずキャリアオイルや水で希釈します(具体的な濃度は後述します)。
洗いすぎない
前章のとおりです。洗浄力の強すぎるシャンプーや、1日に何度もの洗髪は、乾燥を通じて皮脂の過剰分泌を招くことがあります。
洗い方も同じくらい大事です。爪を立てず、指の腹でやさしく洗い、すすぎ残しをなくす。すすぎ残しは、それ自体がにおいの材料になります。






目と耳に入れない
頭皮に使ったものは、流れます。
シャワーで洗い流すとき、額から目へ、こめかみから耳へと動線ができます。目に入れば強い刺激になりますし、耳の中も皮膚の薄い場所です。洗い流す向きを意識してください。






柑橘系は日中に使わない
レモンやベルガモットなどの柑橘系精油の一部には、光毒性があります。肌についた状態で紫外線を浴びると、炎症や色素沈着を起こすことがあります。
頭皮そのものは髪に覆われていますが、うなじ・生え際・耳の後ろは日光に当たります。日中に外出する予定があるなら、柑橘系は避けてください。
ローズマリーを避けたほうがよい人
この記事の主役はローズマリーですが、次に当てはまる方は使用を避けてください。
- 妊娠中の方
- 高血圧の方
- てんかんのある方


頭皮アロマは効くのか——よく引用される研究を正直に見る


頭皮と精油について調べると、必ず出てくる有名な研究が2つあります。まずそれを、盛らずに紹介します。
ローズマリー精油とミノキシジルを比べた試験(2015年)
イランの研究チームが行った比較試験です。
男性型脱毛症の患者を、ローズマリー精油群50名とミノキシジル2%群50名に無作為に割り付け、6か月間観察しました。結果は次のとおりです。
- 3か月時点では、どちらの群も毛髪数に有意な変化はなかった
- 6か月時点で、どちらの群も、開始時および3か月時点と比べて毛髪数が有意に増加した
- 両群のあいだに、毛髪数の有意な差はなかった(3か月時点・6か月時点とも)
- 頭皮のかゆみは、ミノキシジル群のほうが多かった
出典:Panahi Y, Taghizadeh M, Marzony ET, Sahebkar A. *Rosemary oil vs minoxidil 2% for the treatment of androgenetic alopecia: a randomized comparative trial.* Skinmed. 2015;13(1):15-21.(PMID: 25842469)
4種の精油ブレンドと円形脱毛症の試験(1998年)
イギリス・アバディーンの研究です。
円形脱毛症の患者86名を対象にした無作為化二重盲検比較試験で、介入群はタイム・ローズマリー・ラベンダー・シダーウッドをホホバオイルとグレープシードオイルに混ぜ、毎日頭皮にマッサージしました。対照群はキャリアオイルのみでマッサージしています。7か月の試験で、3か月時点と7か月時点に評価を行いました。介入群のほうが改善した人の割合が高かったと報告されています。
出典:Hay IC, Jamieson M, Ormerod AD. *Randomized trial of aromatherapy. Successful treatment for alopecia areata.* Arch Dermatol. 1998;134(11):1349-1352.
この記事で「育毛」を扱わない理由






理由は2つあります。
ひとつめは、法律の問題です。
精油は医薬品ではありません。日本では、化粧品や雑貨に対して「育毛」「発毛」「抜け毛を防ぐ」といった表現を使うことは認められていません。研究があっても、それを商品の効能として語ることはできない、ということです。
ふたつめは、研究の対象がずれていることです。
上の2つは、いずれも脱毛症(男性型脱毛症・円形脱毛症)という診断のついた方を対象にした試験です。「夏に頭皮がにおう」「夕方に根元がベタつく」という悩みに対して行われたものではありません。対象が違う研究の結果を、そのまま自分の悩みに当てはめることはできません。
| 研究が示していること | 研究が示していないこと |
|---|---|
| 脱毛症の患者群で、毛髪数などに変化が見られた | 一般の方のにおい・ベタつきが改善すること |
| 6〜7か月という長い期間での観察結果 | 数日〜数週間で変化が出ること |
| 医薬品と比べた試験が存在すること | 精油が医薬品の代わりになること |
| 頭皮のかゆみの頻度に差があったこと | 精油に育毛・発毛の効能があると表示してよいこと |
では、におい・ベタつきに何を期待できるのか
現実的な範囲は、次の3つです。
- 清潔に保つ習慣が続けやすくなる — 香りがあることで、洗う・乾かす・整えるという手順が「やらされる作業」ではなくなります
- 使用感が変わる — キャリアオイルでのプレオイルは、洗いすぎを防ぐ緩衝になります
- 一日の切り替えの目印になる — 夜のケアに固定の香りを置くと、区切りが作りやすくなります
なお、ティーツリーはフケの原因菌として知られる Malassezia 属に対する抗菌作用が語られることの多い精油です。ただし、これも「フケが治る」という話ではありません。



同じ「ローズマリー」でも、中身が違う


精油を選ぶとき、多くの方が見ているのは名前です。しかし、同じ「ローズマリー」と書かれていても、中身の成分比率は同じとは限りません。
ケモタイプという考え方
同じ植物種でも、育った土地の気候や土壌によって、含まれる成分の比率が変わります。これをケモタイプと呼びます。
同じラベルでも、産地が違えば、香りも、肌への刺激の強さも変わりうる、ということです。
主要成分の構成
ローズマリー精油のおおよその成分構成は、次のとおりです。
| 成分名 | 構成比率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1,8-シネオール(ユーカリプトール) | 30〜50% | 主要成分。すっきりとした香りの中心 |
| α-ピネン | 15〜25% | 樹木様の香り |
| カンファー(樟脳) | 10〜20% | 血行や覚醒に関わるとされる成分 |
| β-ピネン | 5〜15% | — |
| カンフェン | 5〜7% | — |
| ボルネオール | 1〜5% | — |


産地で変わる
産地による違いは、実際に数値で出ます。たとえばモロッコ産は1,8-シネオールが43〜57%と高い比率になります。
doTERRAのローズマリーは、モロッコ・チュニジア・スペイン産を使用しています。






ローズマリー精油そのものについては、成分と使い方をまとめた記事があります。
▶ ローズマリーの効果・効能と使い方|記憶力&集中力を高めるハーブアロマ
頭皮アロマの実践——洗う前と、洗ったあとの手順


ここから実践です。濃度と順番さえ守れば、難しいことはありません。
希釈は1%以下から
頭皮は皮膚です。ボディに使うときと同じ感覚で濃くすると、刺激が強すぎます。
キャリアオイルで1%以下を基本にしてください。目安として、キャリアオイル10mlに対して精油2滴でおよそ1%です。初めて使う場合は、さらに薄い0.5%程度から始めても構いません。
キャリアオイルは、ホホバオイルや分留ココナッツオイル(FCO)が扱いやすい選択肢です。
必ずパッチテストをする
初めて使う精油は、腕の内側で試してから頭皮に使ってください。
希釈したオイルを少量塗り、24時間ようすを見ます。かゆみ・赤み・ヒリつきが出た場合は使用を中止してください。頭皮は自分の目で見えない部位なので、異常が出ても気づくのが遅れます。だからこそ、見える場所で先に確かめます。
手順A:シャンプー前のプレオイル
ベタつきが気になる方向けの手順です。
- 乾いた頭皮に、1%に希釈したオイルを少量なじませる
- 指の腹で、生え際から頭頂に向かってやさしく動かす(爪を立てない)
- 5分ほど置く
- そのままシャンプーで洗い流す
油で油を浮かせる考え方です。洗浄力の強いシャンプーに頼らずに済むぶん、洗いすぎを避けられます。
手順B:洗髪後の頭皮スプレー
においが気になる方向けの手順です。
- 無水エタノール 5ml
- 精製水 45ml
- 精油 合計1〜10滴(初めてなら少ないほうから)
無水エタノールに精油を溶かしてから精製水を加え、よく振って使います。使う前に毎回振ること。
そして、ここは大事です。作り置きをしないでください。 防腐剤が入っていないため、冷蔵保存でも2週間程度を目安に使い切ります。
手順C:乾かしきる
意外なことに、ここがいちばん結果に効きます。
前章のとおり、においは菌が皮脂を分解することで生まれます。濡れたまま放置する時間は、菌にとって最も都合のよい時間です。どれだけ良い精油を使っても、乾かしきっていなければ意味が薄れます。
根元から、しっかり乾かしてください。
| 手順A プレオイル | 手順B 頭皮スプレー | |
|---|---|---|
| 向いている悩み | ベタつき | におい |
| 使うタイミング | シャンプー前(乾いた頭皮) | 洗髪後・乾かす前 |
| ベース | キャリアオイル | 無水エタノール+精製水 |
| 濃度の目安 | 1%以下 | 精油1〜10滴/50ml |
| 保存 | その都度つくる | 冷蔵・2週間目安 |
| 頻度の目安 | 週1〜2回 | 毎日でも可 |








doTERRA ローズマリー —— 頭皮ケアに選ばれてきた精油


ここまでお読みいただいた前提で、製品のご紹介です。
ローズマリー精油 15ml(製品番号 30200001)
doTERRAのローズマリーは、モロッコ・チュニジア・スペイン産を使用しています。前章のとおり、モロッコ産は1,8-シネオールの比率が高いことで知られる産地です。
頭皮ケアの文脈でローズマリーが選ばれてきた背景には、成分面の性質もあります。ローズマリー精油には経皮吸収を助ける性質が報告されており、ほかの成分の皮膚への浸透を高めることが知られています(Pharm Biol, 2015)。ブレンドのベースとして使われることが多いのは、このためです。
ブレンドの相性
| 組み合わせ | 向いている場面 |
|---|---|
| ローズマリー + ペパーミント | 夏の頭皮に、清涼感のある仕上がりを求めるとき |
| ローズマリー + レモン | すっきりした香りにまとめたいとき(※日中の使用は避ける) |
| ローズマリー + フランキンセンス | 落ち着いた香りで、夜のケアに使いたいとき |






まとめ


最後に、要点を整理します。
- においとベタつきは原因が違う。 においは皮脂と常在菌が混ざって生まれ、ベタつきは皮脂そのもの。打ち手は逆方向になります
- 洗いすぎは逆効果になりうる。 乾燥が皮脂の過剰分泌を招くことがあります
- 有名な2つの研究は、脱毛症の患者を対象にしたもの。 一般の方のにおい・ベタつきの話ではなく、精油に育毛の効能を認めるものでもありません
- 守るべきは3つだけ。 希釈1%以下、パッチテスト、そして根元から乾かしきること
夏の頭皮の悩みは、頭皮が変わったからではなく、環境が変わったから起きています。ケアも季節に合わせて変えれば、そのぶん素直に返ってきます。





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参考文献・出典
- Panahi Y, Taghizadeh M, Marzony ET, Sahebkar A. Rosemary oil vs minoxidil 2% for the treatment of androgenetic alopecia: a randomized comparative trial. Skinmed. 2015;13(1):15-21.(PMID: 25842469)
- Hay IC, Jamieson M, Ormerod AD. Randomized trial of aromatherapy. Successful treatment for alopecia areata. Arch Dermatol. 1998;134(11):1349-1352.
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