佐藤美咲








この記事では、栄養学の基本である3大・5大栄養素から、近年注目されている「7大栄養素」までを体系的に解説します。「ちゃんと食べているのに不調が消えない」と感じている方は、ぜひ最後までお読みください。
3大栄養素・5大栄養素・7大栄養素とは?違いを一覧で理解しよう
まず全体像を把握しましょう。3大・5大・6大・7大栄養素は、「何を数えるか」の違いです。


3大栄養素(エネルギー産生栄養素)
3大栄養素は、体を動かすための「燃料」です。
- タンパク質 — 筋肉・臓器・酵素・ホルモンの材料
- 脂質 — 細胞膜の構成・ホルモン原料・体温維持
- 炭水化物 — 脳と筋肉の即効エネルギー源
この3つだけでは、エネルギーは作れても体の調整ができません。車に例えると「ガソリンはあるのに、エンジンオイルがない」状態です。
5大栄養素
3大栄養素にビタミンとミネラルを加えたものが5大栄養素です。
- ビタミン(13種)— 代謝の触媒。B群が不足すると、せっかく摂ったタンパク質や糖質をエネルギーに変換できない
- ミネラル(16種)— 骨格形成・神経伝達・酵素活性。マグネシウムだけでも300種類以上の酵素反応に関与
学校の家庭科や保健体育で習うのは、ここまでです。



6大栄養素
5大栄養素に食物繊維を加えたものが6大栄養素です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2025年版」でも、食物繊維の目標量は成人22g/日以上に引き上げられました。それだけ重要性が認識されているのです。
食物繊維は「便秘対策」だけではありません。腸内環境を整える=すべての栄養吸収の土台を作るという、根本的な役割を担っています。
7大栄養素
6大栄養素にフィトケミカル(ファイトケミカル)を加えたものが7大栄養素です。
フィトケミカルとは、植物が紫外線や害虫から自分を守るために作り出す化学物質の総称。ポリフェノール、カロテノイド、テルペン類など、5,000種類以上が確認されています。


なぜ今「7大栄養素」が注目されているのか?
「新型栄養失調」という現代の問題
令和5年の国民健康・栄養調査によると、日本人の野菜摂取量は平均256g。目標の350gに対して約27%も不足しています。しかも、この数字は10年間で減少傾向にあります。
カロリーは十分摂っているのに、ビタミン・ミネラル・食物繊維・フィトケミカルが足りない——これが「新型栄養失調」です。





最新の科学が裏づける「第7の栄養素」
2025年に発表されたPLOS ONEのメタ分析では、食事性フィトケミカル指数(DPI)が高いほど、がんリスクが有意に低下することが確認されました。
また、フラボノイドを1日579mg以上摂取すると、60歳以上の即時記憶想起が改善するというRCTメタ分析の結果も報告されています。
厚生労働省の食事摂取基準では、フィトケミカルはまだ「策定対象外」です。しかし、機能性表示食品制度ではポリフェノールなどの個別成分について、科学的根拠に基づく機能表示が認められています。
制度が追いつく前に、科学のエビデンスが先に積み上がっている——それが今のフィトケミカルの位置づけです。





7大栄養素を一つずつ徹底解説
ここからは、7大栄養素それぞれの役割・不足症状・摂り方を詳しく見ていきましょう。
① タンパク質 — 体をつくる材料
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役割 | 筋肉・臓器・皮膚・髪・爪・酵素・ホルモン・抗体の材料 |
| 1日の目安 | 体重1kgあたり1〜1.5g(60kgなら60〜90g) |
| 不足で起きること | 筋力低下・免疫力低下・肌荒れ・髪のパサつき・むくみ |
| 食材例 | 肉・魚・卵・大豆・乳製品 |
タンパク質は「動物性」と「植物性」をバランスよく摂ることが大切です。動物性はアミノ酸バランスに優れ、植物性は脂質が少なく食物繊維も同時に摂れるメリットがあります。
理想は動物性:植物性 = 1:1です。
② 脂質 — 「減らす」より「質を変える」
脂質と聞くと「太る」イメージがありますが、実は細胞膜やホルモンの材料として欠かせません。
大切なのは量ではなく質です。
- 積極的に摂りたい脂質:オメガ3(青魚・亜麻仁油)、オメガ9(オリーブオイル)
- 避けるべき脂質:トランス脂肪酸(マーガリン・ショートニング・加工食品)






③ 炭水化物 — 糖質制限の落とし穴
炭水化物は脳の唯一のエネルギー源です。「糖質制限」が流行していますが、極端な制限は集中力低下や筋肉の分解を招きます。
ポイントは「糖質の質を選ぶ」こと。GI値(血糖値の上昇速度)が低い食品を中心にしましょう。
- 低GI食品:玄米・全粒粉パン・さつまいも・オートミール
- 高GI食品(控えめに):白米・食パン・うどん・ジャガイモ


④ ビタミン — B群は「チームで働く」
ビタミンは13種類あり、大きく「脂溶性(A・D・E・K)」と「水溶性(B群・C)」に分かれます。
特に注目すべきはビタミンB群です。B群は8種類あり、単独ではなくチームで連携して機能します。
| ビタミン | 主な役割 | 不足で起きること |
|---|---|---|
| B1 | 糖質代謝・神経機能 | 疲労感・集中力低下 |
| B2 | 脂質代謝・皮膚粘膜 | 口内炎・肌荒れ |
| B6 | アミノ酸代謝・神経伝達物質合成 | PMS・むくみ |
| B12 | 神経機能・赤血球 | 悪性貧血・手足のしびれ |
| 葉酸 | DNA合成・赤血球生成 | 貧血・胎児の神経管閉鎖障害 |
また、ビタミンDは日本人の8割が不足していると言われています。骨の健康だけでなく、免疫機能やメンタルヘルスにも深く関わっています。
⑤ ミネラル — ドベネックの桶理論
ミネラルを理解するうえで重要なのが「ドベネックの桶理論」です。
桶の板の高さがバラバラだと、一番低い板から水が溢れてしまいますよね。ミネラルも同じで、最も不足している1種類がボトルネックになります。カルシウムだけたくさん摂っても、マグネシウムが不足していれば効果が出ないのです。








特に現代人に不足しがちなミネラルは以下の4つです。
| ミネラル | 不足で起きること | 含まれる食材 |
|---|---|---|
| マグネシウム | 足がつる・不眠・偏頭痛 | 海藻・ナッツ・豆腐 |
| 鉄 | 貧血・疲労・冷え | レバー・ほうれん草・ひじき |
| 亜鉛 | 味覚障害・免疫低下・肌荒れ | 牡蠣・赤身肉・卵 |
| セレン | 免疫低下・甲状腺機能低下 | かつお・まぐろ・卵 |
⑥ 食物繊維 — 腸が整わないと全部ムダ
食物繊維が「第6の栄養素」として注目される理由は明確です。腸内環境が荒れていると、①〜⑤の栄養素がどんなに良くても吸収されないからです。
食物繊維には2種類あり、それぞれ異なる役割を持っています。
| 種類 | 働き | 食材例 |
|---|---|---|
| 水溶性食物繊維 | 善玉菌のエサ → 短鎖脂肪酸を産生 → 腸壁修復 | 海藻・オクラ・大麦・アボカド |
| 不溶性食物繊維 | 腸の物理的清掃 → 蠕動運動促進 | ごぼう・きのこ・玄米・豆類 |
理想の比率は水溶性:不溶性 = 1:2です。








⑦ フィトケミカル — 体を守る「最終防衛線」
フィトケミカルは、植物が紫外線・害虫・病原体から身を守るために作り出す化学物質です。
「野菜の色」は、実はフィトケミカルの色なのです。
| 大分類 | 代表的な物質 | 色 | 含まれる食材 | 主な作用 |
|---|---|---|---|---|
| ポリフェノール | アントシアニン | 紫 | ブルーベリー・紫芋 | 抗酸化・眼精疲労 |
| ポリフェノール | カテキン | 緑 | 緑茶 | 抗菌・脂肪燃焼 |
| カロテノイド | リコピン | 赤 | トマト・スイカ | 強力な抗酸化(ビタミンEの100倍) |
| カロテノイド | ルテイン | 黄 | ほうれん草・卵黄 | 眼の保護 |
| テルペン類 | リモネン | — | 柑橘類の皮 | リラックス・消化促進 |
| テルペン類 | リナロール | — | ラベンダー | 鎮静・睡眠促進 |
| 含硫化合物 | スルフォラファン | — | ブロッコリースプラウト | 解毒酵素活性化 |


ここで注目したいのがテルペン類です。テルペン類は、植物のエッセンシャルオイル(精油)に多く含まれるフィトケミカルです。
たとえば、ペパーミント精油1滴には、ペパーミントティー約28杯分のテルペン類が濃縮されています。



「ちゃんと食べてるのに不調が消えない」を解決する実践法
7大栄養素の知識を日常に落とし込むための、具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:自分に足りない栄養素を知る
以下のチェックリストで、不足が疑われる栄養素を特定しましょう。
| 不調 | 不足が疑われる栄養素 |
|---|---|
| 慢性的な疲労 | 鉄・ビタミンB群・マグネシウム |
| 午後の眠気 | ビタミンB1・低GI食品不足 |
| 肌荒れ・ニキビ | 亜鉛・ビタミンA・ビタミンC |
| 冷え | 鉄・ビタミンE |
| イライラ・PMS | マグネシウム・ビタミンB6・カルシウム |
| 集中力低下 | 鉄・亜鉛・オメガ3 |
| 便秘 | 食物繊維(水溶性+不溶性) |
| 風邪をひきやすい | ビタミンC・亜鉛・ビタミンD |


ステップ2:毎日の食事に「+3食材」
7大栄養素をすべて意識するのは大変です。まずは3つの食材を毎日の食事にプラスすることから始めましょう。
- きのこ類をどの料理にもひとつ足す → 食物繊維+ビタミンD
- 海藻サラダを週3回メニューに入れる → 水溶性食物繊維+ミネラル
- ナッツを小皿に出して家族のおやつに → オメガ3+マグネシウム+ビタミンE
この3つだけで、不足しがちな食物繊維・ミネラル・フィトケミカルを自然に補えます。



ステップ3:「色」で献立を考える
フィトケミカルは「野菜の色」で簡単に判断できます。1日の食事に5色以上を取り入れることを意識しましょう。
- 赤:トマト・パプリカ(リコピン)
- 橙:にんじん・かぼちゃ(β-カロテン)
- 緑:ブロッコリー・ほうれん草(スルフォラファン・ルテイン)
- 紫:ナス・ブルーベリー(アントシアニン)
- 白:にんにく・玉ねぎ(アリシン)





TOTONOE式 7大栄養メソッド — 7つ揃って、はじめて体は整う
ここまで解説してきた7大栄養素を、私たちは4つの層で体系化しています。


| 層 | 栄養素 | 役割 |
|---|---|---|
| エネルギー層 | ①タンパク質 ②脂質 ③炭水化物 | 体を「動かす」燃料 |
| 調整層 | ④ビタミン ⑤ミネラル | 体を「整える」潤滑油 |
| 土台層 | ⑥食物繊維 | 体を「受け入れる」基盤 |
| 防御層 | ⑦フィトケミカル | 体を「守る」最終防衛線 |
3大栄養素だけでは「動く」だけ。5大で「整う」。6大で「吸収できる」。そして7大で「守れる」。
7つ揃って、はじめて体は整う。
これがTOTONOE式 7大栄養メソッドの考え方です。



まとめ:7大栄養素を知ることが、健康への第一歩
本記事のポイントを整理します。
- 3大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)は体を「動かす」燃料
- 5大栄養素は3大にビタミン・ミネラルを加えた「整える」仕組み
- 6大栄養素は食物繊維を加えた「吸収する」土台
- 7大栄養素はフィトケミカルを加えた「守る」完全体
- 日本人の野菜摂取量は目標の73%しか満たせていない(新型栄養失調)
- フィトケミカルの健康効果は、2025年のメタ分析で科学的に裏付け済み
- まずは「きのこ・海藻・ナッツ」の+3食材から始めよう


頑張っているのに不調が消えないとき、それは「努力が足りない」のではなく「視点が足りない」だけかもしれません。
3大栄養素の視点から、7大栄養素の視点へ。
あなたの食卓を変える第一歩として、今日の夕食に「きのこ」を一品加えてみてください。
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