「最近、理由もなくイライラする」「夜中に急に暑くなって目が覚める」「肌の調子が安定しない」
40代半ばを過ぎたあたりから、こうした変化を感じている方は少なくありません。
厚生労働省の調査によると、40〜50代の女性の約半数が更年期に関連する何らかの症状を経験しています。経済産業省のデータでは、更年期による経済損失は年間約1.3兆円にのぼるとも報告されています。
「自分に合ったケアを見つけたい」
そう感じている方に、いまアロマの世界で注目されているのが ゼラニウム×イランイラン という精油ブレンドです。
この記事では、なぜこの2つの精油が更年期世代に選ばれているのか、その科学的な根拠と具体的な使い方を、研究データをもとに解説します。
そもそも更年期に何が起きているのか

更年期とは、日本産科婦人科学会の定義では 閉経前後の約10年間 を指します。日本人女性の平均閉経年齢は50.5歳。つまり、おおむね 45〜55歳 が更年期にあたります。
さらに最近では 「プレ更年期」 という言葉も広がっています。30代後半から卵巣機能が徐々に低下し始め、更年期に似た症状が現れることがあるためです。
更年期に起こる主な変化
更年期の根本的な原因は、エストロゲン(女性ホルモン)の急激な減少 です。
エストロゲンは、体温調節・自律神経・骨密度・肌のうるおい・精神の安定など、全身の機能に関わっています。このホルモンが減少することで、心身にさまざまな不調が現れます。
| 分類 | 主な症状 |
|---|---|
| 血管運動症状 | ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)、発汗、冷え |
| 精神神経症状 | イライラ、不安、抑うつ、不眠、集中力低下 |
| 運動器症状 | 腰痛、肩こり、関節痛 |
| 皮膚・粘膜症状 | 肌の乾燥、かゆみ |
NHKの調査では、50代前半の女性の 45.3% が更年期症状を経験中と回答。40代後半でも 32.8% が該当しています。
つまり、更年期の不調は一部の人だけの問題ではなく、3人に1人が経験する、ごく一般的な身体の変化 なのです。
なぜ「アロマ」が更年期ケアの選択肢になるのか

「精油の香りで本当に体に変化があるの?」
そう思われる方もいるかもしれません。
精油の香り成分は、鼻の奥にある嗅覚受容体に届くと、嗅神経を通じて脳の大脳辺縁系 に直接信号を送ります。大脳辺縁系は感情・記憶・自律神経・ホルモン分泌を司る領域です。
つまり、香りは 「考える」前に、脳の深い部分に届く という特徴を持っています。
この仕組みが、更年期のセルフケアにおいてアロマが注目される理由です。
ホルモン補充療法(HRT)や漢方など医療的アプローチとは別に、日常生活の中で手軽に取り入れられる補完的なケア として、精油の活用が広がっています。
ゼラニウム精油の科学 — エストロゲンとの関係を示す研究

ゼラニウム精油は、バラに似た華やかな香り が特徴で、古くからスキンケアや香水に用いられてきました。
主要成分
| 成分名 | 含有率 | 特徴 |
|---|---|---|
| シトロネロール | 24〜38% | 穏やかな香り。ゼラニウムの主要成分 |
| ゲラニオール | 6〜27% | ローズ様の香り。抗酸化作用の報告あり |
| リナロール | 3〜10% | ラベンダーにも含まれるリラックス成分 |
| シトロネリルフォルメート | — | エステル類。香りの深みを形成 |
これら上位3成分とそのエステルで、精油全体の 約60%以上 を構成しています。
注目の研究データ
研究1:嗅覚刺激によるエストロゲン分泌への影響
長崎大学大学院の篠原一之教授と日本アロマ環境協会(AEAJ)の共同研究(Shinohara et al., 2017, Neuroendocrinology Letters)では、40代の更年期前後の女性15名を対象に、10種類の精油の嗅覚刺激を調査しました。
その結果、ゼラニウムとローズオットーの2種類のみ、唾液中のエストロゲン(エストラジオール)濃度が対照群と比べて有意に上昇したと報告されています。
嗅覚刺激が、視床下部→下垂体を経由してエストロゲン分泌を促す可能性を示唆した研究として注目されました。
研究2:不安の軽減と主観的肌質の変化
AEAJが実施したランダム化比較試験(RCT)では、40〜50代の女性35名を対象に、ゼラニウム精油を継続的に嗅いだグループと対照群を比較しました(Japan Journal of Aromatherapy, Vol.20, 2019)。
結果は以下の通りです。
- STAI(特性不安検査)のスコアが 有意に減少
- POMS 2の「活気-活力」「友好」スコアが 有意に増加
- 「肌の潤い」「髪の潤い」の主観的実感が 有意に増加
研究3:系統的レビューによる総合評価
2026年に発表されたVieira氏らの系統的レビュー(Flavour and Fragrance Journal)では、ゼラニウム精油は不安軽減・疼痛緩和・皮膚症状に有効性を示し、安全で低コストな補完療法 として位置づけられると結論づけています。
※いずれの研究も、効果を保証するものではありません。精油は医薬品ではなく、治療を目的としたものではありません。
イランイラン精油の科学 — 自律神経と血圧への作用

イランイランは、フィリピンやインドネシアなど熱帯地域に咲く花から抽出される精油で、甘く濃厚なフローラルの香り が特徴です。
主要成分
| 成分名 | 含有率 | 特徴 |
|---|---|---|
| リナロール | 7〜28% | リラックス成分。グレードExtraに多い |
| 酢酸ベンジル | 5.5〜28% | 甘い香りの主成分 |
| 安息香酸ベンジル | 2.9〜14% | 穏やかな鎮静作用の報告あり |
| β-カリオフィレン | — | セスキテルペン系。抗炎症作用の報告あり |
| ゲルマクレンD | 3〜20% | グレードIII に多い |
イランイランには Extra・I・II・III の4段階 のグレードがあり、Extraが最も高品質で、リナロールの含有率が高いのが特徴です。
注目の研究データ
研究1:血圧と心拍数への影響
健康な男性29名を対象とした研究(PMC3836517)では、イランイラン精油の吸入により、血圧が 115/66 → 97/59 に低下。60分の暴露後、心拍数・血圧ともに低下し、交感神経活動の抑制 が確認されました。
研究2:高血圧傾向のある方への吸入効果
前高血圧・高血圧の方を対象とした別の研究(PMC3521421)では、イランイラン精油の吸入により 収縮期血圧の有意な低下 と、唾液中 コルチゾール(ストレスホルモン)濃度の低下 が示唆されています。
研究3:経皮吸収によるリラックス効果
Hongratanaworakit & Buchbauer(2006)の研究では、イランイラン精油の経皮吸収により 血圧の有意な低下 と 皮膚温の上昇 が確認され、被験者は「穏やか」「リラックスした」と自己評価しました。
これらの研究から、イランイランは 自律神経のバランスをサポートする香り として、更年期世代の方から関心を集めています。
※研究結果の紹介であり、効果を保証するものではありません。
ゼラニウム×イランイラン — ブレンドで生まれる相乗効果

では、なぜこの2つの精油を ブレンドして使う ことが推奨されるのでしょうか。
作用の補完関係
| 精油 | 主な作用領域 | 更年期への関連 |
|---|---|---|
| ゼラニウム | エストロゲン分泌促進の可能性、不安軽減、肌質改善 | ホルモンバランス・精神面・スキンケア |
| イランイラン | 自律神経安定、血圧降下、リラックス | ホットフラッシュ・動悸・不眠・ストレス |
ゼラニウムが ホルモンと精神面 にアプローチし、イランイランが 自律神経と身体的症状 をサポートする。
この2つを組み合わせることで、更年期の多面的な不調に対して 幅広くカバーできるブレンド になるのです。
香りの相性
ゼラニウムのローズ調の華やかさと、イランイランの濃厚な甘さは、互いを引き立て合います。
ただし、イランイランは香りが非常に強いため、ゼラニウム多め のブレンドがおすすめです。
推奨ブレンド比率
| 用途 | ゼラニウム | イランイラン | 合計 |
|---|---|---|---|
| ディフューザー(基本) | 3滴 | 1滴 | 4滴 |
| アロマバス | 3滴 | 1〜2滴 | 4〜5滴 |
| トリートメントオイル(30ml) | 4滴 | 2滴 | 6滴(1%濃度) |
基本は「3:1」 と覚えておいてください。
相性のよい追加精油
さらにアレンジしたい方には、以下の精油を1〜2滴追加するのもおすすめです。
- クラリセージ — 酢酸リナリルを含み、更年期世代に人気の精油
- ラベンダー — 安眠サポートの代表格。寝室での使用に
- オレンジスイート — 柑橘の爽やかさで甘すぎる香りを調整
- フランキンセンス — 呼吸を深め、瞑想的な落ち着きをプラス
今日から始められる5つの使い方

ゼラニウム×イランイランのブレンドを、実際の生活に取り入れる方法をご紹介します。
使い方1:朝のディフューザー
超音波式ディフューザーに水100mlを入れ、ゼラニウム3滴+イランイラン1滴を加えます。
6〜8畳の部屋で30分〜1時間が目安。朝の支度中にリビングで焚くと、1日のスタートが穏やかになります。
使い方2:夜のアロマバス
お湯(38〜40度のぬるめ)に、ゼラニウム3滴+イランイラン1滴を加えます。
重要:精油は水に溶けません。 天然塩(大さじ1)やバスベースに混ぜてからお湯に入れてください。15〜20分の半身浴がおすすめです。
就寝1時間前の入浴は、体温の自然な低下を促し、入眠をサポートするといわれています。
使い方3:セルフトリートメントオイル
ホホバオイルやスイートアーモンドオイル30mlに、ゼラニウム4滴+イランイラン2滴を加えます(希釈率約1%)。
首・デコルテ・手足に優しく塗布しながら、深呼吸をしてみてください。
※顔に使う場合は希釈率0.5%以下(30mlに精油3滴以内)に。パッチテストを行ってからご使用ください。
使い方4:枕元のティッシュアロマ
ティッシュにゼラニウム1滴+イランイラン1滴を垂らし、枕の横に置くだけ。
ディフューザーがなくてもすぐに始められる、最もシンプルな方法です。寝室での使用に適しています。
使い方5:手作りアロマ化粧水
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 精製水 | 45ml |
| グリセリン | 5ml |
| 無水エタノール | 5ml |
| ゼラニウム精油 | 2滴 |
| イランイラン精油 | 1滴 |
無水エタノールに精油を溶かしてから、精製水とグリセリンを加えて混ぜます。スプレーボトルに入れ、2週間以内に使い切り ましょう。使用前に振ってからスプレーしてください。
精油を選ぶときに知っておきたい3つのポイント

ポイント1:品質で選ぶ
精油は植物から抽出された100%天然の芳香物質です。合成香料や希釈品ではなく、成分分析表(GC/MS分析)が公開されている精油 を選びましょう。
doTERRAの精油は、第三者機関による品質検査を経た CPTG品質基準 を採用しています。
ポイント2:グレードを確認する(イランイラン)
イランイランにはExtra・I・II・IIIの4グレードがあります。リラックス成分であるリナロールの含有率が高い Extra が最もおすすめです。
ポイント3:使用上の注意を守る
- 精油の 原液を直接肌に塗らない(必ずキャリアオイルで希釈)
- 妊娠中・授乳中・持病のある方は、使用前に医師に相談
- 柑橘系精油を追加する場合は、光毒性に注意(塗布後12時間は直射日光を避ける)
- お子さまやペットがいる空間では、ディフューザーの使用時間を短めに
よくある質問(FAQ)
Q. 精油は更年期の症状を「治す」ものですか?
A. いいえ。精油は医薬品ではなく、治療を目的としたものではありません。あくまで 日常のセルフケアのひとつ として、生活の質を高めるためにお使いください。症状が強い場合は、婦人科の受診をおすすめします。
Q. ゼラニウムとイランイラン、どちらか1つだけでも使えますか?
A. もちろん使えます。まずはゼラニウム単体から始めて、慣れてきたらイランイランを加えてみるのもよい方法です。
Q. 男性が使っても問題ありませんか?
A. 問題ありません。更年期は女性だけでなく男性にもあります(LOH症候群)。リラックスや自律神経のサポートとして、性別を問わず香りを楽しんでいただけます。
まとめ — 科学が後押しする、やさしいセルフケア

ゼラニウムとイランイランは、それぞれが異なるアプローチで更年期世代の心身をサポートする精油です。
- ゼラニウム — エストロゲン分泌との関連が研究で報告されている、数少ない精油のひとつ
- イランイラン — 自律神経の安定・血圧降下・リラックス効果が複数の研究で確認
- ブレンド比率3:1 — 香りのバランスと作用の補完性を両立
大切なのは、完璧なケアを目指すことではなく、「心地いい」と感じる香りを、暮らしの中にそっと取り入れること です。
まずはティッシュに1滴からでも、今日の夜から始めてみませんか。
精油を使ったセルフケアの具体的なレシピや、季節ごとのブレンド提案を LINE公式 で毎週配信しています。
暮らしを整える研究室 渡邊大悟
https://totonoe.schoogate.co.jp/line/open/zfHaeGot86Ct
参考文献
- Shinohara, K. et al. (2017). Effects of essential oil exposure on salivary estrogen concentration in perimenopausal women. Neuroendocrinology Letters, 37(8), 567-572.
- AEAJ (2019). 継続的に精油の香りを纏うライフスタイルが40代女性のQOLに与える影響. Japan Journal of Aromatherapy, 20(1).
- Hongratanaworakit, T. & Buchbauer, G. (2006). Relaxing effect of ylang ylang oil on humans after transdermal absorption. Phytotherapy Research, 20(9), 758-763.
- Hur, M.H. et al. (2012). Effect of essential oil inhalation on blood pressure and salivary cortisol levels in prehypertensive and hypertensive subjects. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine.
- Vieira, A.I. et al. (2026). Geranium Essential Oil Use for Human Health: A Systematic Review of Clinical Evidence. Flavour and Fragrance Journal.
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