柑橘の精油だけが水蒸気蒸留ではなく圧搾法で作られるのは、香りの主成分が熱で壊れてしまうからです。そして搾って採るからこそ、蒸留では移らないはずの「光毒性」の成分まで、一緒に瓶の中へ入ってきます。
抽出法の話は、単なる製法の豆知識ではありません。なぜ柑橘だけ作り方が違うのかを知ると、そのまま「日中に肌へ塗っていいのか」という使い方の判断につながります。
佐藤美咲


この記事では、次の順番でお伝えします。
- 柑橘精油だけが「圧搾法」で作られている事実と、他の精油との比較
- 果皮の油胞——搾るだけで精油が採れる、柑橘だけの構造
- 熱をかけない理由はリモネン——モノテルペン類が熱に弱いということ
- 圧搾だからこそ入るフロクマリンと光毒性の話
- doTERRAのオレンジ(ワイルドオレンジ)の製品情報と、日常での使い方
「良い香り」で終わらせず、製法から使い方までを一本の線でつなぐことを目指します。
柑橘精油だけが水蒸気蒸留ではなく圧搾法で作られている


精油の抽出方法は、ひとつではありません。原料の性質に合わせて使い分けられています。
| 抽出方法 | 主な対象 | 熱 | 代表的な精油 |
|---|---|---|---|
| 水蒸気蒸留法 | 花・葉・木部・樹脂 | かかる | ラベンダー、ペパーミント、ティーツリー |
| 圧搾法(低温圧搾) | 柑橘の果皮 | かけない | オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ベルガモット |
| 溶剤抽出法 | 熱に極端に弱い花 | かけない | ジャスミン、ローズ(アブソリュート) |
| 超臨界流体抽出 | 幅広い | ほぼかけない | 一部の高級精油 |
精油の世界では水蒸気蒸留法が主流です。
釜に原料と水を入れて加熱し、立ちのぼる蒸気を冷やして、水と油に分ける。
ラベンダーもペパーミントもティーツリーも、この方法で作られています。
ところが柑橘だけは違います。doTERRAのオレンジも、公式サイトの製品情報にはっきりと「低温圧搾法」と書かれています。






この章の要点:精油の抽出は水蒸気蒸留法が主流で、花も葉も木部も加熱して香りを取り出します。しかし柑橘だけは例外で、果皮を熱をかけずに搾る「低温圧搾法」が使われます。doTERRAのオレンジも公式表記は低温圧搾法です。
柑橘の果皮には「油胞」があり、搾るだけで精油が採れる


みかんの皮をむいたとき、指先にツンとした香りが残った経験はありませんか。あるいは皮を折り曲げたときに、細かい霧が飛んだこと。
あれが答えです。
柑橘の果皮には油胞(ゆほう)と呼ばれる小さな袋が無数に並んでいて、そこに精油が詰まっています。
皮の表面をよく見ると、点々としたくぼみが見えます。あれが油胞のひとつひとつです。
つまり柑橘は、精油がすでに「液体の状態で」皮の中に貯蔵されているという、かなり特殊な植物です。
ラベンダーの花や、ティーツリーの葉は、こうはいきません。
香り成分は組織のなかに散らばっていて、そのままでは取り出せない。だから蒸気の力を借りて、成分を気化させて運び出す必要があります。
一方の柑橘は、袋を破れば出てくる。






なお、家庭でみかんの皮を搾っても精油は作れません。ごく微量ですし、水分や果汁が混ざります。工業的には専用の機械で果皮を削り取ったり、ローラーで圧をかけたりして、遠心分離で精油だけを取り分けています。
この章の要点:柑橘の果皮には油胞という袋があり、そこに精油が液体のまま貯蔵されています。組織内に香り成分が散在している花や葉と違い、袋を破れば取り出せるため、蒸留という工程を経る必要がありません。これが柑橘だけ製法が違う第一の理由です。
熱をかけない理由は「リモネン」——モノテルペン類は熱で失われやすい


柑橘を蒸留しない、もうひとつの理由。それが成分の性質です。
doTERRAのオレンジの主な成分として公式に挙げられているのは、リモネンとミルセン。どちらもモノテルペン類と呼ばれるグループに属します。
| 成分 | 分類 | 特徴 |
|---|---|---|
| リモネン | モノテルペン炭化水素 | 柑橘の香りの中心。揮発性が高い |
| ミルセン | モノテルペン炭化水素 | やわらかい甘さを支える |
モノテルペン類は、分子が軽く、揮発しやすく、熱や酸化に弱いという共通の性質を持っています。
ここで水蒸気蒸留を思い出してください。釜の中は高温です。熱に弱い成分に、長時間の加熱を加えたらどうなるか。
香りの中心にある成分が変質し、フレッシュさが失われます。
だから柑橘では、圧搾機を冷やしながら搾る「コールドプレス」という方法が選ばれます。熱を避けることそのものが、品質の条件になっているのです。






そのとおりです。抽出法は、香りの品質と安全性の両方を決めています。
ちなみにリモネンが揮発しやすいということは、開封後の劣化も早いということでもあります。柑橘精油の使用期限が他の精油より短めに案内されることが多いのは、この性質が理由です。
この章の要点:柑橘の香りの中心はリモネンなどのモノテルペン類で、分子が軽く熱や酸化に弱い性質があります。高温の水蒸気蒸留にかけると香りの質が損なわれるため、圧搾機を冷やしながら搾るコールドプレスが選ばれます。同時に、開封後の劣化が早い理由でもあります。
搾るからこそ入る成分がある——フロクマリンと光毒性


ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
圧搾法には、蒸留にはない特徴があります。
それは果皮に含まれる成分が、ほぼそのまま瓶に入るということ。
熱で飛ばす工程がないので、揮発しにくい成分も一緒に残るのです。
そのなかに、フロクマリン類があります。
フロクマリン類は、紫外線に当たると皮膚に反応を起こすことがある成分群です。
これがいわゆる光毒性と呼ばれるもので、なかでも作用が強いとされるのがベルガプテンです。
そして重要なのが、次の事実です。
フロクマリン類は揮発性が低いため、同じ果皮を水蒸気蒸留しても精油には移りません。
| 抽出法 | フロクマリン類 | 光毒性 |
|---|---|---|
| 圧搾法(コールドプレス) | 含まれる | あり |
| 水蒸気蒸留法 | ほぼ移行しない | 心配は少ない |
| FCF(フロクマリンフリー)処理 | 除去済み | 低減されている |
つまり「柑橘精油は光毒性がある」という言い方は、正確ではありません。正しくは「圧搾で作られた柑橘精油には光毒性がある」です。






柑橘のなかでも光毒性の強さは違う
もうひとつ、押さえておきたいことがあります。柑橘なら一律に危険、というわけでもないということです。
公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)のアロマサイエンス研究所は、柑橘精油に含まれるベルガプテン量を比較した調査を公開しています。
同じミカン科でも種類によって、また同一の種類でも部位・抽出方法・生育地・収穫時期によって濃度に変動があることが示されています。
一般に、ベルガモットは光毒性が強い側、スイートオレンジやマンダリンはリスクが低い側として扱われます。ワイルドオレンジ(Citrus sinensis)は後者にあたります。






なお、これは肌に塗る場合の話です。ディフューザーで香らせる分には、この注意は当てはまりません。
この章の要点:圧搾法は熱をかけないため、揮発しにくいフロクマリン類まで精油に残ります。これが光毒性の正体で、水蒸気蒸留の柑橘精油には移行しません。オレンジやマンダリンはベルガモットに比べリスクが低いとされますが、ゼロではないため塗布後の紫外線は避けます。
ワイルドオレンジの使い方——香らせる・薄めて塗る・掃除に使う


ここまでの内容をふまえて、日常での使い方を整理します。doTERRA公式サイトに掲載されている使い方は、次の3つです。
- 拭き掃除にスプレーで使用する
- 飲料水に1滴加える
- ディフューズして空気をリフレッシュする
これに、アロマの一般的な使い方として「薄めて肌に塗る」を加えて考えます。
香らせる(もっとも手軽で、注意点も少ない)
ディフューザーに2〜3滴。柑橘の香りは主張がやわらかく、他の精油とも合わせやすいのが利点です。光毒性を気にせず使えるのがこの方法です。
朝の空気を入れ替えたいとき、部屋にこもった匂いをリセットしたいときに向きます。
薄めて肌に塗る(日中は避ける)
キャリアオイル(ホホバオイルなど)で薄めてから使います。原液を直接肌に塗るのは避けてください。
| 使う場面 | 目安の希釈率 | キャリアオイル10mLあたり |
|---|---|---|
| 全身のボディケア | 1% | 2滴 |
| 部分的に使う | 1〜2% | 2〜4滴 |
| 顔まわり | 0.5%以下 | 1滴以下 |
| 妊娠中・お子さま | さらに低く/要相談 | 医師・薬剤師に相談 |
そして繰り返しになりますが、塗ったあと12時間は紫外線を避けてください。日中の外出前に腕や首に塗る、という使い方はしないこと。夜のケアに回すのが現実的です。
はじめて使うときは、前腕の内側でパッチテストを。少量を塗って24時間、赤みやかゆみが出ないかを確認します。
掃除に使う
公式にも挙げられている使い方です。水で薄めてスプレーボトルに入れ、拭き掃除に。柑橘の香りが残るのが気持ちよく、続けやすい使い方です。






保管について
リモネンは酸化しやすい成分です。遮光瓶のまま、直射日光と高温を避けて保管してください。フタはしっかり閉める。冷暗所が基本です。
香りが変わってきた、瓶の口がベタつくといった変化を感じたら、肌に塗る用途からは外し、掃除など別の使い方に切り替えるのが安全です。
この章の要点:もっとも手軽で注意点が少ないのは芳香浴です。肌に塗る場合はキャリアオイルで1%前後に薄め、塗布後12時間は紫外線を避けます。掃除への活用は公式にも挙げられた使い方です。リモネンは酸化しやすいため、遮光・冷暗所での保管が前提になります。
doTERRA オレンジ(ワイルドオレンジ)——低温圧搾で果皮から採る一本


「では、どの精油を選べばいいのか」。
抽出方法の話をしてきたからこそ、中身が分かっている精油を選ぶことが結論になります。TOTONOEでdoTERRAを扱っている理由を、公式情報にもとづいてご紹介します。
製品情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名(日本) | オレンジ |
| 学名 | Citrus sinensis |
| 内容量 | 15mL |
| 参考小売価格 | 2,900円(税込) |
| 会員価格 | 1,900円(税込) |
| PV | 16 |
| 抽出部位 | 果皮 |
| 抽出方法 | 低温圧搾法 |
| 主な成分 | リモネン、ミルセン |
| 香り | 甘い/新鮮/シトラス |
※上記の内容量・価格・成分はdoTERRA公式サイトのオレンジ製品ページに掲載されている情報です(2026年8月時点)。






会員価格と参考小売価格の差は1,000円。柑橘は減りが早い精油なので、続けて使う方にとってこの差は小さくありません。
CPTG品質基準——8段階のテスト


doTERRAは、すべての精油にCPTG(Certified Pure Tested Grade)という自社基準のテストを実施しています。公式に公開されている8つのテストは次のとおりです。
| # | テスト名 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 官能検査 | 人の感覚(視覚・嗅覚・味覚・触覚)で色・匂い・濃度の均一性を確認 |
| 2 | 微生物試験 | 菌類・バクテリア・カビなど有害物質の有無を調べる |
| 3 | ガスクロマトグラフィー試験 | 精油を気化させ、構成要素に分離して化合物を特定 |
| 4 | 質量分析法 | 構成物質をイオン化し、分子の重さと電荷を利用して分析 |
| 5 | フーリエ変換赤外分光法(FTIR) | 赤外線を通し、吸収された光の量を測定 |
| 6 | 旋光度測定 | 対掌性(キラリティー)を検証し、合成分子の有無を確かめる |
| 7 | 同位体解析 | 質量分析計で精油中の同位体の存在量を測定 |
| 8 | 重金属試験 | ICP-MSで重金属の含有量を検証 |
各テストの内容はdoTERRA公式のCPTG品質テストのページで公開されています。






まさにそこです。抽出方法と成分が開示されていることが、この記事で書いてきた注意点をすべて成立させる前提になります。
Co-Impact Sourcing——産地とつながる調達
doTERRAはCo-Impact Sourcingという調達モデルを掲げています。原料を安く買い叩くのではなく、生産者と長期のパートナーシップを結び、適正な価格と地域への還元をともなう形で調達するという考え方です。
柑橘は生鮮農産物です。その年の天候、収穫の時期、果皮の状態が、そのまま精油の質に出ます。誰がどこで育てたかを追えることは、品質を保つうえで実務的な意味を持ちます。



使い始めの3ステップ
① ディフューズしてみる
2〜3滴。まずは香りに慣れるところから。
② 掃除に使ってみる
水で薄めてスプレーに。減りが早い柑橘は、こういう使い方と相性がいい。
③ 夜のケアに1滴
キャリアオイル10mLに2滴。日中は避け、夜に。
この章の要点:日本での商品名は「オレンジ」、学名は Citrus sinensis、15mLで参考小売2,900円・会員1,900円・PV16、低温圧搾法で果皮から抽出されます。CPTGの8テストのうちガスクロマトグラフィーと旋光度測定は、合成成分の混入を確認する項目として柑橘で特に意味を持ちます。
よくある質問
ワイルドオレンジとオレンジは違うものですか
同じものです。学名はどちらも Citrus sinensis。米国では「Wild Orange」という商品名で販売されていますが、日本のdoTERRA公式サイトでは「オレンジ」という商品名で掲載されています。日本で探すときは「オレンジ」で検索してください。
オレンジ精油を塗った日は外に出られないのですか
外出できないわけではありません。注意が必要なのは塗った部位に紫外線が当たることです。
doTERRAの製品情報では、塗布後12時間は紫外線を避けるよう案内されています。
衣服で覆われる部位に使う、あるいは夜のケアに回す、という使い分けが現実的です。ディフューザーで香らせる場合、この注意は当てはまりません。
圧搾法と水蒸気蒸留法ではどちらの精油が良いのですか
目的によって異なります。圧搾法はフレッシュな香りが得られる一方でフロクマリン類が残り、光毒性への配慮が必要です。
水蒸気蒸留法は香りの印象が変わりますが、フロクマリン類が移行しないため光毒性の心配は少なくなります。日中に肌へ使いたい場合は蒸留タイプやフロクマリンフリーを、香りを楽しみたい場合は圧搾タイプを、という選び方ができます。
柑橘の精油は他の精油より早く使い切ったほうがよいのですか
その傾向があります。柑橘の主成分であるリモネンなどのモノテルペン類は揮発性が高く酸化しやすいため、他の精油に比べて品質が変わりやすいとされています。
遮光瓶のまま冷暗所で保管し、香りの変化や瓶の口のベタつきを感じたら、肌に使う用途からは外すのが安全です。
みかんの皮から自分で精油を作れますか
家庭では現実的ではありません。油胞に含まれる精油はごく微量で、手で搾ると果汁や水分が混ざります。
工業的には専用の機械で果皮を削り取り、遠心分離で精油だけを取り分ける工程が必要です。皮を乾かして入浴剤やお茶に使う、といった楽しみ方のほうが向いています。
まとめ


最後に、この記事の要点を整理します。
- 柑橘精油だけが水蒸気蒸留ではなく圧搾法(低温圧搾)で作られる。doTERRAのオレンジも公式表記は低温圧搾法
- 理由の一つは果皮の「油胞」。精油が液体のまま貯蔵されているため、搾るだけで採れる
- もう一つの理由はリモネンなどモノテルペン類が熱に弱いこと。加熱するとフレッシュさが失われる
- 搾るからこそフロクマリン類まで残る。これが光毒性の正体で、蒸留の柑橘精油には移行しない
- オレンジやマンダリンはベルガモットよりリスクが低いとされるが、ゼロではない。塗布後12時間は紫外線を避ける
- もっとも手軽なのは芳香浴。肌に塗るなら1%前後に希釈し、夜のケアに
- 日本での商品名は「オレンジ」。15mL/参考小売2,900円・会員1,900円・PV16
「柑橘だけなぜ蒸留しないのか」という問いの答えは、そのまま「だからこう使う」という答えでもありました。
製法を知ると、精油の扱いは驚くほどシンプルになります。この記事が、その入口になればうれしく思います。


精油選びに迷ったら
「結局どの精油から選べばいいの?」という声をよくいただきます。
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参考にした資料
あわせて読みたい
- オレンジ精油の効果・効能と使い方|不安を解消する柑橘アロマ——香りの活用そのものについては、こちらでまとめています
- とうもろこしを主食にした地域だけで起きた病気——「食べているのに足りない」がなぜ起きるのかを、ナイアシンの歴史からnoteにまとめました
※本記事は精油に関する情報提供を目的としたものであり、疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。日本において精油は雑貨に分類されます。体調に不安がある場合、また症状が続く場合は医療機関にご相談ください。









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